活動報告

Public Health実践講座主催2024年度第1講開催のご報告

2024.10.20

2024年10月15日に、Public Health実践講座主催で2024年度第1講が行われました。今回は日本医療政策機構(HGPI)の代表理事・事務局長を務められている乗竹亮治先生が講義を担当しました。

Public Health.実践講座とは、千葉大学の現役学生が中心となって運営しているサークル活動であり、当センターは運営のサポートをしています。

乗竹先生には「医療人類学と医療政策の架け橋を目指して〜当事者の声をどう政策に活かせるか〜」という題で、主に4つのポイントに分けてご講演をいただきました。

1つ目は病とは何かという問題提起をもとに生理学的な視点であるDiseaseと病者と文化的な文脈を含むillnessとの違いに触れながら、痛み一つをとっても文化によって捉え方が異なる例を挙げた、医療機関で行うことが医療の全てではなく医療の前後に人類学や人文科学的な考察や位置付けがあるというお話でした。また、島国で救急車が足りないと国からの要請があったが、実際、行ってみると救急船の方が必要だった例をはじめ複数の具体的な事例から現地で当事者の話を聞く重要性についてリアリティを持って教えていただきました。

2つ目はアメリカのProject Hopeや巨大医療機器メーカーMedtronic社などの人道支援の例から、いわゆる「大人の事情」というキーワードを軸にした、いかに実現可能で持続可能な支援、献身的な人道支援だけではなく利益を得ながら行うような実践的なオペレーションにしていくのかというお話でした。

3つ目は「脱医療化」というキーワードからPublicとは一体何なのかというお話でした。日本の医師がミャンマーの患者を診るという例から見られるように医療DXでグローバルに患者と医師がつながりつつある中で、公衆衛生を語る時に、想像上の共同体の区分を現在の地理的な国家としているのが本当にいいのかというジレンマや、コロナ禍に成熟した市民社会で起きたロックダウンに対するデモの例からみる生権力や生政治などの国家が個人に介入することに関するジレンマがある。その先に、今後さらに遺伝子の研究が進むことで医療の個別化が増し、一歩間違えたら選民思想的な方向性になり得るというジレンマもまた存在する。これらのジレンマ、「想像の共同体・生権力/生政治・個別化医療」を考えた時、公衆衛生を考える上で根底になるPublicを再定義するあるいはそもそも存在するのかについてお話しされていました。

4つ目は、1つ目にあった当事者の話を聞きに行くということから、当事者が発信する場を提供するというところに視点を移して、主に民主主義において質的に違うものから代表を選ぶ代表制について考えるお話でした。例としてSNSで繋がる現代では患者団体ではなく個人で積極的に活動している人に対しセミナーやトレーニングを提供してパブリックの場面でも呼べるように日本医療政策機構がお墨付きを与えるというシステムJ-PEPを挙げられていました。

このように公衆衛生を学ぶ上で大切な観点を学べる貴重な講演で、対面とオンラインのハイブリッド開催でしたが質問やその後の議論もとても活発なものでした。

お忙しい中、大変有意義なご講義を賜りました乗竹亮治先生とPublic Health実践講座の運営スタッフの方々に感謝申し上げます。

(文 世界孝樹 産業医科大学医学部 / 次世代医療構想センターインターン)