活動報告

【阿部幸喜】ジュネーブWHO本部にてのWHO-FIC年次会議に参加してまいりました!-Report on attending the WHO-FIC Annual Meeting at WHO Headquarters in Geneva.-

2025.11.28

次世代医療構想センターで国際保健分類を担当しております阿部幸喜(特任准教授)でございます。

10月13日から19日にジュネーブのWHO本部で開催されましたWHO-FIC 年次会議に参加してまいりましたのでご報告します。WHOが開発管理する国際分類ICD-11,ICF,ICHIについての会議です。

世界各国から担当者が参加し、日本からは、WHO-FIC日本協力センターからの派遣として、厚生労働省のICD室清水室長、人口動態統計室の中山指導官、国立科学院の星先生、北海道大学の向野先生、杏林大学の山田先生、国立国際医療センターの秋山先生と私阿部が現地参加しました。WHO-FIC年次会議は十数個の会議体によって構成されますが、私は、担当させていただいているMbRG:Morbidity Reference GroupとHIRG: Health Inervention Reference Groupという会議に出席しました。 MbRGでは、ICD-11の疾病領域について、議論され、HIRGではICHIの運用・維持について議論されました。

ICD-11は、国内で令和8年1月に官報告示が予定されており、また、ICHIは2026年5月のWHAにおいて採択が見込まれているため、いずれの議論もsensitiveなものであり、緊張の中にも充実したものでした。

最終日には、日本のケースミックスにおける次期手術分類としてSTEM7とICHIについての比較をした研究結果について発表させていただきました。

全体で12題のみ選出されるプレゼンですので、日本のデータヘルス進捗についてのWHOの注目度の高さがうかがわれます。わずか5分間のプレゼンですが、大講堂のセンターテーブルでしたので、とても緊張いたしました。各会議の共同議長として重責を担う中山指導官や向野先生のご活躍にはおよびませんが、日本のプレゼンスを示すために最低限の貢献をできたものと自負しております。現在ICD-11は世界で導入が取り組まれていますが、アフリカ・中東・アジア地域も引けを取らずに、むしろリードしつつあるのが現状です。日本も頑張ってまいりたいです。

ところで、「どうして、ICD-11が必要なのか?」「なくても困らないよ。」という声を聴きます。現状の診療情報の記録で良しとするならば、その通りかもしれません。

では、質問を変えてみます。

「どうして我々医療従事者は、診療記録を残す必要があるのでしょうか?」

医療者の診療記録記載の義務は、ヒポクラテスの時代から言われております1)

「目の前の患者さんへの治療が大切で、記録はどうでもいい!」これは、30年前の私自身が口にしていた恥ずかしい言葉です。ですが、一人の患者さんの病気やけがは、必ずほかの人にも生じます。目の前の患者さんから得られる情報は、医療者のものではありません。個人情報の問題はありますが、皆で共有する必要があります。

その患者さんの後ろには同じ疾病で悩む方々がいます。次世代へ残さなければならない情報です。患者さんの身体の中を触ることを許されるのは医師だけですが、この経験から得られる知見を医師個人の経験値の積み上げに終わらせてよいわけがありません。長期間の闘病をなさった患者さんの治療を経て得られた知見を、その場に居合わせた医療者の経験だけにしてはいけません。希少症例は、症例報告しますが、そのように認識されない症例は、医師の個人的な経験として眠ることになります。

そうならないようにカルテ(診療録)があります。必要事項を、抜けなく簡潔に言葉(テキスト)で記載できていれば、もちろん立派に義務を果たしていると思います。

しかし、将来、全国の同様の問題を抱えた患者さんのカルテを全て調べるとしたらどうでしょうか。仮に1000件の症例の病院名とID番号がわかれば、病名までは抽出わかるかもしれません。それでも、合併症、手術などの医療行為の内容、患者さんの状態、入院形態などは、電子カルテから抽出できたとして、カルテにかかれたテキストを読み込むのは骨が折れます。もしも10000件となると、不可能に近くなります。

これらの情報が標準化された記号(コード)で分類されていたらいかがでしょうか。診療録や退院時サマリーがそのまま巨大データベースになります。これまでの、ICD-10では、大まかな傷病名を表現するのが限界でしたので、前述の臨床内容を記録することは不可能でした。死因統計や患者調査などの政府統計、DPCのケースミックスコードの一部を表すのにとどまっています。ICD-11では、エクステンションコードの付与により、無限に表現は広がり、診療上での出来事をくまなく表現することが出来ます。厚生労働省が進めるPersonal Health Record (PHR)2)、デジタル庁が推進する Public Medical Hub(PMH)3)の内容ついてもエクステンションコードを適切に使うことにより表現できます。

もちろん、国内に適切な記号やコードがあれば、それを使うのも良いでしょう。しかし、前述のとおり、ICD-10の粒度では病名を示すのが限界でありますし、標準病名マスターの病名管理番号の粒度でも同様と思います。一方でICD-11では、傷病の重症度の程度や病型の分類、発症時期他の付帯情報(入院時、入院後、慢性期、急性期、最大資源投与傷病)を示すことが出来ます。中心分類のICFを用いれば、治療によって得られた機能改善を示すことが出来ますし、ICHIを用いれば、手術や検査などの医療保健的な介入を示すことが出来ます。カルテ情報のほとんどを記号(コード)で示すことができます。お気づきと思いますが、医療DXの3文書6情報に親和性がバッチリなのです4)

この文脈では、医療情報の二次利用が叫ばれています。しかし、これは、正確な一次情報があればこそのものであり、一次情報(正確なカルテ記載など)を確立しうるのは、医療従事者(医者、コメディカル、診療情報管理士など)だけです。後世への遺産となります。このためには、ICD-11によるコード化デジタル化の普及が一番の近道と考えております。

デジタル庁が力強く旗を振るDXの時代です。ICD-11を利活用することにより、我々も積極的に医療DXを推進したいところです。

 

I, Koki Abe, attended the WHO-FIC Annual Meeting at the headquarters in Geneva, joining both Japanese and international specialists. The conference focused on discussions about ICD-11, ICF, and ICHI, all managed and developed by WHO, and I participated in subgroups dedicated to disease classification and health interventions. Notably, ICD-11 is scheduled for official notification in Japan in 2026, and ICHI is expected to be adopted at the WHA in May of the same year, so debates around these topics were intensive and highly significant.

On the final day, I presented comparative research on STEM7 and ICHI as future surgical classifications in Japan. ICD-11 has been implemented globally, especially in Africa, the Middle East, and Asia, demonstrating leadership, which should encourage Japan to accelerate its own efforts.

While there are voices in the medical community questioning the necessity of ICD-11, Dr. Abe asserts that standardized coded records are essential for sharing, compiling, and utilizing medical information as a nationwide resource. Unlike ICD-10, ICD-11 enables documentation of detailed disease information, severity, and supplementary attributes. I consider it is the one of vital keys for advancing medical DX and for the effective use of Personal Health Records (PHR) and other digital platforms. Since only healthcare professionals can create such reliable records, expanded coding and digital transformation through ICD-11 are fundamental for innovation and securing a robust legacy for future generations.

 

WHO大会議質の雰囲気

新館玄関のエンブレム(右)

1)國方栄二編訳 ヒポクラテス医学論集 岩波文庫より

2)厚生労働省 PHR(Personal Health Record)サービスの利活用に向けた国の検討経緯について

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000741661.pdf

3)デジタル庁自治体・医療機関等をつなぐ情報連携システム(Public Medical Hub:PMH)

https://www.digital.go.jp/policies/health/public-medical-hub

4)厚生労働省文書情報(3文書)及び電子カルテ情報(6情報)の取扱についてchrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001016921.pdf